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『病気のせい』にしていませんか? 家族の特徴や関係性に潜む落とし穴 ――スケープゴート化とモラハラの危険性について

2025.09.02

『病気のせい』にしていませんか? 家族の特徴や関係性に潜む落とし穴

――スケープゴート化とモラハラの危険性について

1. 「うまくいかないのは病気のせい」という誤解

家庭や人間関係の中で問題が起きたとき、「うまくいかないのはあの人に精神疾患があるからだ」と結論づけてしまう場面は少なくありません。

発達障害やうつ病、不安障害などがあると、その人が家族の中で「問題の中心人物」と見なされ、

何か不都合があるたびに「やっぱり病気のせい」「あの人がいなければスムーズにいく」といった説明がされがちです。

しかし実際には、うまくいかない原因が疾患そのものにあるとは限りません。むしろ、家族の特徴や関係性、互いのコミュニケーションの取り方に深く根ざしているケースの方が多いのです。

2. 家族の特徴や関係性が影響する理由

家族は、小さな社会のような存在です。それぞれの価値観、役割分担、過去の経験や世代的な考え方が重なり合って、関係性が築かれます。

そのため、家族の在り方によっては「問題が一人に集中してしまう」ことが起こります。

たとえば:

  • 支配型の親と従順な子:親が「正しいのは自分だけ」とふるまうと、子どもが自分の意見を出せなくなり、息苦しさを抱えます。疾患がある子に矛先が向きやすくなります。

  • 感情表現が乏しい家族:気持ちを共有する習慣がなく、問題が起きても「言葉にしないでやり過ごす」ことが続くと、不安や誤解が積み重なります。

  • 誰か一人が「世話役」に固定される:たとえばきょうだいの一人が「面倒を見る役」にされると、その人の負担が過剰になり、やがて怒りや不満が疾患を持つ家族へと向けられます。

こうした特徴や関係性のパターンが絡み合うことで、実際の困難さが増幅され、「やっぱり病気のせい」と見える構造が作られていきます。

3. スケープゴート化の危うさ

家族の中で誰かが「原因扱い」されると、その人はスケープゴート(生け贄役)になってしまいます。

これは心理学でよく知られている現象で、集団の不満や不安を一人に押しつけることで、他のメンバーが安心するという仕組みです。

しかし、それは問題の本質を隠してしまいます。

実際には、家族の在り方や関係性そのものに改善が必要なのに、「病気だから仕方ない」と片付けられてしまうのです。

結果として、スケープゴートにされた人は二重の苦しみ――疾患による困難と、家族からの否定――を背負うことになります。

4. モラハラに発展するメカニズム

「病気だからダメなんだ」「あの人のせいでうまくいかない」と繰り返されると、それはやがてモラルハラスメントにつながります。

  • 言葉の暴力:「あなたが病気だから家族が苦労する」

  • 行動の制限:「病気なんだから外に出るな」「勝手なことをするな」

  • 人格否定:「病気の人に価値はない」

こうした態度は、表面的には「世話をしている」「支えている」という形をとることさえあります。

しかし実際は、相手を尊重せずにコントロールし、力関係を固定化する行為です。

モラハラが続くと、疾患がある本人は回復のチャンスを失い、むしろ症状が悪化することすらあります。

そして、家族全体も本来の解決から遠ざかってしまいます。

5. 健全な家族関係を築くために

では、どうすれば「疾患のせい」にせず、健全な関係性を取り戻せるのでしょうか。

  1. 原因を一人に押しつけない
     問題が起きたとき、「誰のせいか」を探すのではなく、「どうすればうまくいくか」を一緒に考える姿勢が大切です。

  2. 疾患と人格を切り分ける
     「病気があること」と「その人の人間性」を混同しないように意識します。疾患があっても、尊厳や意見は尊重されるべきです。

  3. 外部のサポートを取り入れる
     家族だけで抱え込まず、専門家や支援機関につながることも重要です。第三者の視点が入ると、関係性の歪みが見えやすくなります。

  4. 小さなコミュニケーションの積み重ね
     「ありがとう」「助かった」といった日常の言葉が、信頼を育みます。疾患がある人に対しても「対等な家族」として声をかけることが大切です。

6. まとめ

家庭や人間関係がうまくいかないとき、つい「精神疾患のある人が原因だ」と思い込みがちです。

しかし、実際には家族の特徴や関係性そのものが大きな要因になっていることが多くあります。

疾患を持つ人をスケープゴートにしてしまうと、モラハラや人格否定につながり、さらに関係が悪化してしまいます。

本当に必要なのは、「誰かのせい」にすることではなく、家族全体の関係性を見直すことです。

疾患があってもなくても、人は尊重され、支え合う存在です。その視点を持つことが、家族がより健全に機能するための第一歩になるでしょう。

 

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