お知らせ|埼玉県入間市の精神科・心療内科専門 訪問看護ステーションさぼてん【発達障害、気分障害】

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若年性アルツハイマーとともに生きる

2025.08.05

~女性・男性への接し方と、症状改善に向けた精神訪問看護と家族の支援~

 

 


1. はじめに 〜「まだ若いのに」のその先へ〜

認知症という言葉から、多くの人が思い浮かべるのは高齢者です。

しかし、実際には65歳未満で発症するアルツハイマー型認知症も存在し、それを「若年性アルツハイマー」と呼びます。


日本における若年性認知症の患者数は約4万人とされており、決して稀な病ではありません。

発症年齢は40~50代が中心で、働き盛り・子育て中の人も多く、社会的な影響が非常に大きいのが特徴です。

本人も家族も「まさか自分が」と戸惑いを抱え、適切な支援につながりにくいのが現状です。

本記事では、若年性アルツハイマーの症状や男女別の接し方、精神訪問看護の役割、家族の支援体制について、より詳細に解説します。

今まさに悩まれているご本人・ご家族の一助となるよう、実際のケア事例や制度活用の方法も交えてご紹介します。


2. 若年性アルツハイマーとは?

2-1. 定義と背景

若年性アルツハイマーとは、65歳未満で発症するアルツハイマー型認知症のことを指します。

認知症の中でも最も多いタイプで、脳の神経細胞が徐々に破壊されていく進行性の病気です。

若年性アルツハイマーの診断は遅れがちで、「うつ病」や「燃え尽き症候群」と誤診されることも珍しくありません

周囲からも「年齢的に認知症のはずがない」と思われるため、本人も症状を訴えづらく、医療につながるのが遅くなるケースが多いです。

2-2. 主な症状

  • 記憶障害:予定や人との約束を忘れる、同じ話を繰り返す

  • 言語障害:言葉が出てこない、意味が伝わらない

  • 判断力・実行力の低下:仕事の効率が落ち、日常的なミスが増加

  • 空間認識の低下:道に迷いやすくなる、物の場所がわからなくなる

  • 感情面の変化:不安感、イライラ、抑うつ状態、無気力

これらは緩やかに進行しますが、放置すると急激に悪化することもあります。


3. 男女別の接し方とその違い

3-1. 男性との接し方:役割意識とプライドに配慮

男性は特に「仕事」や「家庭での支柱としての自負」を強く持っているケースが多く、認知症を受け入れにくい傾向があります。

対応のポイント:

  • 「ダメになった」ではなく「一緒に工夫しよう」というスタンス

  • 職場の人間関係や趣味のつながりを断ち切らない

  • 感情的な指摘は避け、冷静に話す

  • 過去の経験や得意分野を活かせる活動を提案(DIY、散歩、写真など)

3-2. 女性との接し方:共感と感情ケアが鍵

女性は家事・育児・介護など多くの役割を担っており、「家庭のことがうまくできない」ことへの落ち込みが強く出る傾向があります。

対応のポイント:

  • 否定せず、「ありがとう」と感謝を言葉にする

  • 不安や悲しみの感情を聞き取る「共感力」が重要

  • ゆっくり話す、指示は1つずつ明確に伝える

  • 写真、手紙、香りなど五感を使った関わりが効果的

3-3. 性格・背景によって個別対応が必要

もちろん、性別に関わらず**「その人らしさ」を大切にした関わり方**が大前提です。

何よりも、「できること」を尊重し、役割を持ってもらうことが本人の自信と生活の質(QOL)を保つ鍵となります。


4. 精神訪問看護の役割とは?

精神訪問看護とは、看護師や精神保健福祉士が自宅に定期的に訪問し、本人と家族を支援するサービスです。

医療的ケアだけでなく、心のケア、生活支援、社会資源の紹介まで幅広く対応するのが特徴です。

4-1. 本人への支援内容

  • 服薬の支援:認知症薬(ドネペジル、メマンチンなど)の服薬を確認・管理

  • 症状の観察:認知機能、情緒、行動パターンの変化を記録

  • 生活リズムの確立:睡眠、食事、入浴などの日常支援

  • 認知リハビリ:数字パズル、言葉遊び、回想法などで刺激を与える

4-2. 家族への支援内容

  • 疾患教育:若年性アルツハイマーの理解を深めてもらう

  • 介護技術の指導:安全な移動や声かけ方法などの実践指導

  • 精神的サポート:介護疲れや不安を傾聴し、ケア

  • 福祉サービスの紹介:デイサービスやショートステイの利用提案

4-3. ケース事例:50代男性・訪問看護の変化

ある50代の男性は、仕事中のミスが増えて退職。無気力になり、家に引きこもるように。

精神訪問看護が始まったことで、毎週の会話が楽しみとなり、「昔の職場の話」を聞く中で自信が回復。

現在は近所の清掃ボランティアに参加し、生活にハリが戻っています。


5. 家族のサポートと工夫

5-1. 「ひとりで頑張らない」が合言葉

若年性アルツハイマーでは、配偶者や子どもが若く、介護の経験が乏しいことも多いため、家庭だけで抱えるのは限界があります

  • まずは「診断を受けた時点」で、医療・介護・福祉の専門家に相談を。

  • 介護者自身のケア(レスパイト)を意識する。

  • 市区町村の包括支援センター、社会福祉協議会、NPO法人などを早期に活用。

5-2. 子どもへの影響とケア

子どもにとって、「親が変わっていく」ことはとても不安です。

  • 子どもの年齢に応じて、やさしく病気の説明をする

  • 不安や怒りを話せる環境(スクールカウンセラーなど)を用意

  • 一緒にできること(食事の用意、散歩など)を作って関わらせる

5-3. 「家族会」に参加するメリット

全国には「若年性認知症本人・家族会」が複数あります。ここでは、同じ経験を持つ家族同士が情報交換・励まし合いを行っています。

  • 彩星の会(全国)

  • きらきら会(東京)

  • 若年認知症サポートセンター(NPO)

家族会では、「孤独じゃない」と実感でき、ケアを長く続ける心の支えになります。


6. 利用できる制度と支援

  • 若年性認知症コーディネーター:各都道府県に配置。支援機関の橋渡し役。

  • 障害者手帳の取得:若年性認知症は知的障害や精神障害と同等の支援対象。

  • 介護保険の特例利用:40歳以上であれば介護保険サービスが利用可能。

  • 就労支援:認知症を抱えながら働くための「就労継続支援B型」など。


7. おわりに:共に生きる社会へ

若年性アルツハイマーは、人生の途中で突然現れる「もうひとつの人生」です。

しかし、正しい理解と支援があれば、本人も家族も穏やかに、前向きに日々を過ごすことができます。

重要なのは、本人を「できない人」として見るのではなく、「今できることを支える」という視点を持つこと。

そして、社会が本人と家族を孤立させないために、医療・福祉・地域が手を取り合う必要があります。

小さな支援の積み重ねが、「希望」をつなぐ力になります。

誰もが安心して暮らせる未来のために、私たち一人ひとりの理解と行動が求められています。

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