はじめに
精神科の診断名を聞いても、内容がよくわからないまま治療が始まってしまうことがあります。
「統合失調症」「認知症」「脅迫性障害」など、病名は知っていても、その中身までは理解できていないことが多いのではないでしょうか。
特に在宅で治療を受けている方やそのご家族にとって、病気への正しい理解は治療の質を左右する大切な要素です。
この記事では、よくある精神疾患の特徴と、病名だけではわかりにくい部分を明らかにしながら、訪問看護の現場でどのようなサポートが可能かを解説します。
病名だけでは不十分な理由
1. 「統合失調症」と一言で言っても、多様な症状がある
統合失調症と診断されると、多くの人が「幻覚」「妄想」といった症状を思い浮かべるかもしれません。
確かにこれらは代表的な症状ですが、それ以外にも以下のような症状が現れることがあります。
- 感情が平坦になる
- 会話が噛み合わない、返答が遅い
- 動作が緩慢になる
- 社会的な接触を避ける
これらの陰性症状は周囲から理解されにくく、「ただ元気がないだけ」と誤解されることもあります。
診断名を伝えられただけでは、こうした具体的な症状や生活への影響まで把握するのは難しいのです。
2. 認知症と老年期精神病はどう違う?
高齢の方が精神的な不調をきたしたとき、「認知症」と診断されることが多いですが、その裏に別の精神疾患が隠れている可能性もあります。
たとえば、以下のようなケースがあります。
- 被害妄想が強く、他者とのトラブルが絶えない→老年期統合失調症の可能性
- 気分の落ち込みや無気力が目立つ→うつ病性認知症の可能性
このように、高齢者の精神症状は一見「認知症」に見えても、実際には他の疾患であることがあります。
誤診が続くと、適切な薬物療法が行われず、かえって症状が悪化することもあります。
3. 脅迫性障害の見逃し
脅迫性障害(OCD)は、本人が「こんなことはおかしい」とわかっていながらも、強迫観念や強迫行為を繰り返してしまう疾患です。
典型的な症状としては、
- 手を何度も洗う
- 戸締まりを何回も確認する
- 汚染への過剰な不安
などがあります。ところが、家族や医師にこのような悩みをうまく伝えられず、うつ病や不安障害と診断されてしまうこともあります。
病名が違えば、処方される薬も異なり、なかなか効果が出ないことになります。
なぜ患者さんや家族の理解が大切なのか
病気に対する「気づき」が、治療の鍵
精神疾患は、本人が自分の症状や状態に気づき、医師と適切なコミュニケーションをとれるかどうかで治療の進み具合が変わります。「なんとなく今の薬が合っていない気がする」「最近、症状が変わってきた」といった自覚があれば、治療方針を見直すことができます。
しかし、自分の症状を言葉にできなかったり、「病名がついているから仕方ない」と思い込んでしまったりすると、必要な変更がなされないまま、症状が慢性化することもあります。
家族が理解していることのメリット
家族が病気を正しく理解していれば、
- 医師との面談で症状を補足できる
- 薬の副作用や効果の変化に早く気づける
- 本人の変化を日常の中で把握しやすい
といった利点があります。逆に誤った理解があると、
無理な対応をして本人を追い詰めたり、不必要に医療機関との関わりを減らしてしまったりするリスクもあります。
精神訪問看護ができるサポート
訪問看護は、患者さんとご家族に寄り添い、病気を理解する手助けができます。
1. 症状の変化を継続的に観察
定期的に訪問することで、患者さんの小さな変化にも気づくことができます。「最近、会話が減った」「睡眠のリズムが崩れている」など、診察室では見逃されがちな変化も、生活の中で見守ることで発見できます。
2. 医師との橋渡し役
患者さん本人がうまく伝えられない思いや症状を、訪問看護師が医師に伝えることで、診断や治療の見直しにつながることがあります。逆に医師からの情報もご家庭にわかりやすく伝えることができます。
3. 病気や薬についてのわかりやすい説明
「今飲んでいる薬はどういう効果があるのか」「なぜこの診断名なのか」といった疑問に、
看護師が丁寧に応えることで、安心感を持って治療に向き合うことができます。
4. 家族支援とケアの相談
家族の悩みや不安も、看護師が受け止めて一緒に考えることで、精神的な負担が軽くなります。「どこまで本人に任せてよいのか」「どう接すればよいか」などの相談も対応可能です。
自分の病気を自分で伝える力を育む
精神疾患の治療には、本人が自分の状態を把握し、医師や支援者に伝えられるようになることが理想です。
訪問看護では、
- 日記をつける習慣づけ
- 症状を言葉にする練習
- 質問リストを作って診察に臨むサポート
など、セルフマネジメントの力を育む支援を行っています。
「なんとなく違和感があるけど、どう言えばいいかわからない」という時にも、看護師が一緒に言葉を探していきます。
まとめ:病名に頼りすぎない支援の重要性
精神疾患の診断名だけでは、その人が抱えている本当の苦しみや困難は見えてきません。
統合失調症でも症状の幅は広く、認知症と思われる症状にも別の背景が隠れていることがあります。
脅迫性障害のように見逃されやすい疾患もあります。
患者さんやご家族が、「診断名=自分のすべて」と思い込まず、
「今の症状や薬が本当に合っているのか」と見直す視点を持つことが大切です。
訪問看護は、こうした気づきを促し、医療との橋渡しをする存在です。
精神疾患と向き合う道のりは決して一人ではありません。
訪問看護というサポートを通じて、「気づき」から「回復」へ、一歩ずつ進んでいきましょう。
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